日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか

なかなかおもしろかった。最初民俗学っぽい感じかなと思って読んでいたんだけど、後半は歴史哲学の話になったりしてた。歴史って絶対的に思われているかもしれないけど、結局ひとつの主観から見た部分的な叙述に過ぎない。その網の目からもれている事例はたくさんある。さらに叙述するということは人間の中でも知性的な部分のみの働きによるものであって、身体的感覚的な部分は当たり前だが歴史には書き込むことはできない。
また現代人の知性重視による充足感の乏しさについての記述も心に残った。現代社会は知性の部分では非常に発達して便利になっている。だけれど知性では把握できない領域についてはとても衰弱してきているのではないか。それが「便利だけどもなぜか充足感はない」という感覚を生んでいるのではないか。
あんまり便利や効率を推し進め過ぎても、社会はやせ細っていくように思います。

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)