ユーザーイリュージョン
ちびちびと読んでいます。
人は普通自分の意思で行動を起こすと思っているけど(それこそ、コップを持ったり、指を動かしたり)、実はそれを決心したその瞬間より「0.5秒前」にはすでに脳の中に電流が起こり始めている。ここで問題になってくるのは、自由意志だ。人は自分の意思で行動しているように思っているが、実はそんなものは幻で、脳の発火によって自動的に動いているのではないかという疑念が湧いてくる。本書では次のような解決案を挙げている。
意識は行動を起こすことはできないが、実行をしてはいけないという決断はできるのだ。 … 個人の責任と自由意志に関連するプロセスは、自発的行為を起こすのではなく、意思決定の結果を選択ないし制御する目的で作動する
これはつまり、意思は、頭の中に湧き上がる衝動には関与できないが、その衝動のどれを選択するかということには関与できる、ということだ。
この自由意志に対するイメージは、なかなか興味深い。意思を強く持って行動せよ、みたいな自己啓発系の発想には致命的なイメージである。もっともそれ系の本の中には、無意識をハッキングして行動を起こさせるというものもあったりするのだけれど。
自己実現、自己責任などの自由意志を尊重する雰囲気のこの時代の中、自由意志というものを疑ってみるのも面白いと思うのだ。
- 作者: トールノーレットランダーシュ,Tor Norretranders,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2002/09/01
- メディア: 単行本
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