読書

 最近、村上春樹を読んでいる。『ノルウェイの森』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、そんでいまは『羊をめぐる冒険(上)』を読み終わったところ。
 『ノルウェイ』はけっこうおもしろくて、『世界の終り』はあんまりおもしろくなかったな。作中の科学者のじいさんはけっこう好きだったけど。そして、今読んでる『羊』はなかなかおもしろい。
 いままで村上春樹は読んだことがなかったんだけど、これはある種の男には確かにフィットするというか慰みになるなぁ、という感じがする。そしてそれが同時に「村上春樹嫌い」の要因になってることもわかった。
 なんというか、村上作品の主人公って「失ったものがある男」なんだよね。生きる楽しみや喜びを失った男。そして、その失ったということを終生大事に抱えている男でもある。そういったものがある種の男には共感を持って味わえるし、方やウジウジしているととらえられるということもあるのだろう。
 あと、もうひとつ重要なファクターは肉体性だね。まあペニスのことなんだけど。あと女性の肉体ね。これらは村上作品とは切っても切れないもの、というか作品のコアの一部である。これはけっして読者の劣情に訴えかけるエサの部分ではなくて、作品のコアの一部だ。男にとっては肉体性というのはとても重要なものなんです。
 このふたつが村上作品のコアになってると思うんだけど、まずいなぁと思うのが、おいらも特にこの前者がよくわかるなぁ、ということ。「失ったものがわかる」という。あんまりね、これを深くわかっちゃう人生ってのはよくない人生な気がするんだよねぇ。なんというか、人生の袋小路みたいな感じがする。こりゃまずいよ。まあ、男ってものは(女もかもしれないけど)年齢を重ねれば否応なくそういう袋小路に追い込まれていくのかもしれないけど、必ずしもそうじゃないと思いたいね。少なくとも別な道はあるんじゃないか。村上作品をわかってしまうおいらは危機感を持ってそう思うのであった。